『i』(著:西加奈子)読後感想
図書館の本を予約したら、次回受け取る本が
5冊以上になってしまい、2週間で読み切れるか不安なnadesukiです(;^ω^)
今回は『i』(著:西加奈子)という本を読んだので、主観的ですが感想を書いていきたいと思います。主観的でない感想ってなんやねん( ゚Д゚)
(一部ネタバレ等含みます)
果てしない罪悪感との闘い
本作の主人公のアイはとにかく罪悪感に苛まれまくる女の子です。
シリアという国で生まれ、アメリカ人の父と日本人の母のもとへ養子として引き取られました。
そんなアイですが、自分が不当な幸福を得ているのではないかと悩んでしまいます。
どんどんと内向していった結果、最終的には日々起こる大きな事件の死者数を
ノートに記録するまで追い込まれます。
世界にはこんなにも苦しんでいる人がいるのに
自分は恵まれた環境にいることが恥ずかしい。
けれど、恵まれなかった人たちへ施しをすることも傲慢に思えてしまう。
これはある種の呪いなのかなと思います。
西加奈子さんの作品で『サラバ!』という作品も読んだことがありますが
どちらの主人公も両親に多大な影響を受けています。
アイも、幼き時から両親に甘えさせてもらっていましたが
「恵まれなかった人のこともちゃんと考えようね」と言われて育ちました。
恵まれた人は恵まれた環境にただ胡坐をかくのではなく、
恵まれなかった人のこともちゃんと考えようという教えはかなりまっとうに思えます。
ただ、子供にとってみたら素直に喜べないのかなとは思います。
大好きなお人形をもらう代償が、その言葉を言われることなのだとしたら、
かなり性格が後ろ向きになっても仕方ないのかなと思わざるを得ません。
素直に喜ぶことが許されないのではないかと思っても仕方ありません。
親友ミナとの出会い
内向的なアイですが唯一親友と呼べる相手、ミナと出会います。
ミナは海外で生活していますが、日本にいるアイとチャットなどでコミュニケーションをとります。
東日本大震災が起こった際、日本から海外へ逃げることを拒んだ理由を
アイがミナに打ち明けるシーンがあります。
世界各国で起こる悲惨な事件に胸を痛めるアイにミナは言います。
「誰かのことを思って苦しいのなら、どれだけ自分が非力でも苦しむべきだと、私は思う。その苦しみを、大切にすべきだって。」
安全地帯にいながら、つらい場所にいる人たちを思って苦しむことに罪悪感をもってしまう人であれば、この言葉は救いになるのではないかとnadesukiは思います。
nadesuki自身、この言葉にはかなり心を揺さぶられました。
nadesukiが高校生だったころ、ある国が災害に見舞われ
クラスの先生がその国のためにできることをしようと言い出したことがあります。
黒板にその国の言葉で応援メッセージを書き、
写真にとって現地へ送ろうという話になりました。
そのとき、nadesukiは違和感を感じていました。
日本という恵まれた環境にいる人間が送った応援のメッセージなんて
その国の人にとって見れば当てつけに過ぎないのではないか?
不愉快にさせるだけなのではないか?
そんなモヤモヤとした想いに対する回答が、
正解かどうかはわかりませんが
ミナのセリフの中にあったんだなと感じました。
正直難しいことなんてわかりません
西加奈子さんの作品は、一つ一つの物事にきっちりと意味付けがなされている印象を受けます(ただ、その意味付けをnadesukiは見つけることがあまりできていませんが………。匂いがかすかに香るイメージでしょうか(;^ω^))。
西さんはエジプトで生活したこともある帰国子女とのことで中東の事件などが作品内でよく取り上げられます。
今いる場所だけでなく、自分を取り巻くあらゆる現実を異なる視点から見るという力は海外に住んだことで得られたのかなと個人的に思います。
nadesukiもかなり内向的な人間であるので、
西さんの作品に出てくる主人公には、思わず自分なんじゃないかと思わされることも多いです。
この作品のタイトルは『i』ですが、主人公の名前でもあり、虚数のiとしても出てきます。
そこには追加でi=自分、i=愛という意味も含まれているのかなと思っています
(主人公のアイという名前が、自分を持った愛のある子に育ってほしいという願いを込められた名前だったので)。
さらに付け加えれば、この本を読んでいる人自身をさしてiなのかなとも、ちょっと思ってしまったり。
作品でたびたび登場する
「この世界にアイは存在しません」
という言葉も
「この世界に、i(今この本を読んでいるあなたは)は存在しません」
というメッセージなのかなという気がしてきました。今。
まとめ
まだ西加奈子さんの作品は2作しか読んだことがありませんが
この2冊だけでも西加奈子さんの作品がとても良い作品だということがわかります。
両作品とも、主人公は堕落しきった後に再生を遂げます。
そして、作品の終わり方にはカタルシスを感じます。
今まで真っ暗だった世界の中に、一筋の光が見えたような感覚が味わえます(*'▽')
このカタルシスを得たいがために、何度も手に取って読んでしまうんだろうなぁ(`・ω・´)
(事実、『サラバ!』も『i』も2回ずつ読みました)
そしてどちらの作品ももう一度読み直す可能性大です。
読むたびに読んだ人の解釈が変わる本が個人的に好きなんですね(`・ω・´)